新型コロナウイルスとビタミンDの深い関係
現代人の生活はビタミンD不足に陥りやすい。では、積極的にビタミンDを摂取するにはどうすればいいのか、をアンチエイジング専門医院・満尾クリニック(東京都渋谷区)院長の満尾正医師=顔写真=に解説してもらっている。今回は、いま最も知っておきたい「新型コロナウイルスとビタミンDの関係」について語ってもらう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
以前この連載でも述べましたが、栄養学に詳しい海外の医師の間では、新型コロナウイルス感染症(COVID―19)のパンデミックを機に、ビタミンDの再評価が進んでいます。
これは元ボストン大学教授で「ドクター・ビタミンD」の異名をとるマイケル・ホーリック博士の報告によるものです。
昨年9月のホーリック博士の報告は、きわめて画期的なものでした。19万人を対象にビタミンDの血中濃度とPCR検査での新型コロナウイルス陽性率の関係を調べたもので、結果は「血中のビタミンD濃度が高くなるほど新型コロナウイルス陽性者の割合は下がる」というものでした。
19万人という大規模な調査でしたが、その相関関係は驚くほどきれいに出ていました。これを見た世界中の医師が「コロナ予防にはビタミンDがよさそうだ」と興味を持ったところに、今度はイギリスから別の論文が出ました。
「新型コロナ感染後にビタミンDを摂取すると、摂取しない人より死亡率が低い」という論文です。
これにより、ビタミンDはコロナ予防だけでなく、感染後の回復に向けても摂取する価値がある、と考えられるようになってきたのです。
こうした発表をベースに、世界中の研究者が新型コロナ対策としてのビタミンDの有効性について研究を進めています。
ところが、なぜか日本の医学界の動きは鈍いのです。その理由はこれまでも述べてきた通り、日本の医師は栄養学に疎く、「新型コロナにビタミンDがよさそうだ」という情報を得ても、具体的にどうすればいいのかを知らないためです。
健康保険で処方できる活性型ビタミンDは、大量に摂取すると高カリウム血症になるというネガティブな知識だけは持っています。しかし、日光を浴びて皮膚で作られる、あるいはサプリメントや天然の食材に含まれる非活性型ビタミンDなら安全かつ効率的に血中濃度を高められるという、正しい代謝を理解している医師があまりにも少なすぎるのです。
新型コロナの感染拡大を受けて、日本人は外出自粛を余儀なくされました。多くのメディアはこれによる経済損失にばかり目を向けています。健康面では「コロナ鬱」とよばれるストレス症状ばかりを取り上げています。
しかし本来は、外出機会が減ったことで日光を浴びる時間がさらに減り、ビタミンDを生成する機会が大幅に減っていることを危惧するべきです。
これも以前述べましたが、ビタミンD不足は鬱病の原因にもなります。新型コロナ感染症やコロナ鬱を防ぎたいなら、いまこそ真剣にビタミンDの補給を考えるべきなのです。
(構成・中井広二)
【満尾正医師】 1982年、北海道大学医学部卒業。杏林大学救急医学講師、米ハーバード大学外科栄養代謝教室研究員、救急振興財団教授を経て、2002年、キレーション治療を中心とした抗加齢医療専門クリニック「満尾クリニック」を開業し院長。日本抗加齢医学会認定医。米国抗加齢医学会認定医。医学博士。最新刊に「医者が教える『最高の栄養』」(KADOKAWA刊)。
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