【全文掲載】男性の健康と幸福を語り合う「男塾」第3回《マインドフルネスの目指すもの》#03
マインドフルネスの実践法
このマインドフルネスという心の使い方はどうやって実践すればいいんだろうか、どうやって見につければいいんだろうかというのが次の話になります。
これはとにかく自分の体験に気付く練習なんですね。自分は今何を感じているのか、何に気付いているのかということに目を向けていく、自分の体験に気付く、とにかく気づく。
「楽しくても楽しいんだ」「悲しくても悲しいんだ」「リラックスしていても、ああリラックスしているんだ」「不安になっていたら、ああ不安になっているんだな」と気付く。
お腹すいてればお腹すいてるんだなと気付くんですね。で、心を閉じない、飲み込まれないでありのままに気付く。でもこの心を閉じない、飲み込まれないというのはそんなに簡単でもないんですよね。
つまり飲み込まれないためには、ものを考えない、考えすぎない、考えないで目の前のことを見るということをお話しました。 でも「考えないぞ」と思うと心を閉じちゃいますよね、だから心を閉じないで、飲み込まれないで、その間のところにいるというのは意外と難しいんですね。 で、今度気づいたらどうするのか、気づいたら例えば、今俺腹減ってるなあと気づいたら、じゃあなんか食べようという風にすぐその気づいたことをなんとかしようとしますよね。
あ、「俺不安になってるわ」と思ったら、この不安をなんとかね、紛らわせようとしますよね。 これをすると、また別の問題が起こってくることが多いんですね、だからマインドフルネスというのは、気づいたらどうにもしないで、何かしようとするのはとりあえず止めて、そのままにしておくと現実がそのまま見え続けるということになります。
「マインドフルネスというと、集中する練習でしょ?」という風に言われることがあります。
「集中力を高めてくれる練習ですよね。集中して一つのことが続けられる、仕事ができる、その他のことに気を散らさないで仕事ができる、これは集中する練習ですよね」と。
でも、集中するというのは一点集中、我々の意識のフォーカス、注意のフォーカスが絞り込まれることが多いので、現実の一部しか見えなくなってしまって、いろんな現実がわからなくなってしまう。それはマインドフルネスではないんですよね。
とすると、注意の集中だけでは不十分で、注意の集中から注意の分割っていうものに移行することがポイントだということになります。
分割というのは気を配る感じですね、いろんなものに気を配って、自分の周りにあることに偏りなく気づいている状態。あるいは等身大に現実に気付いている状態。そういうものが重要なんだということになります。
ウォーキングが非常に良い実践方法
じゃあこれどうやって練習すればいいの、ということなんですが、実はウォーキングが非常に良い実践方法になるんですね。
でも、ウォーキングしながら音楽聞いちゃだめなんですね。音楽の世界に飲み込まれちゃいますからね。あるいは何かの都合でウォーキングする、買い物行くからちょっと早歩きしていこう、運動になるよ、と。
でも、これは運動のためのウォーキングではないんですね。 自分の体験に気付くためのウォーキングなので、だから何かのついでではなく、「歩くために歩く」ということができれば、それがマインドフルネスになるということになります。
これ、心を閉じない、飲み込まれないで今の現実に気付くというのがマインドフルネスなので、日常生活の中でも、ふとした時に我に返るという時間が増えてくれば、それはマインドフルネスを実践しているということになります。
マインドフルネス瞑想の実践法
このウォーキングがとてもおすすめなんですが、さらに一歩進めるとしたら、さっき最初に堀江先生言ってくださいましたが、座禅とか瞑想とかは、マインドフルネスを実践するための方法論なんですね。
非常に専門的と言ってもいいし、効率がいいと言ってもいいし、本格的なと言ってもいいし、これは方法論なんですね。
瞑想というものを通して、マインドフルネスの練習をしていくというのが、もっとadvancedに進みたい方にはおすすめですね。
ただ、瞑想には2つ種類があります。
まずは集中瞑想。普通、瞑想というのはこちらを思い浮かべるんですね。例えば今、「たき火くん」が画面に出ていますが、こうした炎をずーっと見続けることですね。あるいは「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と、ずっと唱え続けるとかですね。
そういうふうに一点集中をする集中瞑想という方法も確かにあります。
でもマインドフルネスとは気を配る瞑想なんで、これは観察瞑想と言うんです。観察瞑想がマインドフルネスの練習方法なんだということをね、一つ頭に入れていただくといいと思います。
どういう方法なのか説明だけしておきます。瞑想する時は背筋がスーッと伸びていることが、とても大事です。背筋がスーッと伸びて身体の他の力がみんな抜けているということですね。
そして、瞑想というのは、注意を向ける、意識を向ける対象というのがあります。意識を向ける対象というのは、呼吸ですね。呼吸に伴う体の動きと感覚、呼吸に伴う身体感覚と言っていいと思うんですけれども、それに静かに注意を向ける。
で、男性は腹式呼吸、女性は胸式呼吸が多いので、男性は息が入ってくると、お腹が膨らんでいく、息が出ていくとお腹がへこんでいく。女性は胸が膨らんでいく、胸が縮んでいくということが起こるわけです。
呼吸をゆったりとして、なるべくコントロールしない。自分で揃えようとしない、体がしたいように呼吸させてあげるんです。
そうすると深く吸いたい時もあれば浅い呼吸の方が楽な時もある。そのままにしておいて、その感覚を感じながら「息が入ってきてるなあ、膨らみ膨らみ膨らみ、出て行ってるなー」「縮み縮み、膨らみ膨らみ、縮み縮み」という風に、自分の呼吸の長さに合わせて、「膨らみ膨らみ、縮み縮み」心の中で自分に言い聞かせるような形です。
これは、呼吸に伴う身体感覚を気づきが追いかけていくような感じですね。その逆、これは違うよ、というのは、「膨らみ膨らみ、縮み縮み」というふうに拍子をとりながら、拍子に合わせて呼吸すること。
これは真逆ですから、違います。呼吸の方が先にあって、気づきが追いかけていく、これが大事なポイントですね。
こういう非常に単調な練習をしていくと、必ず雑念が浮かんできます。雑念と、なんか痒みが気になったり、こわばりが気になったりする。 そういうことが出てきたら、なんか今考え始めちゃって飲み込まれたぞ、と気づいたら、あっと気づいて我に返るんですね。
その時は雑念が出てきている。「雑念雑念」という風に自分に声をかけて、「戻りまーす」と声をかけて、また呼吸に伴うからだの感覚に戻すわけです。 また何か痒みがあるのが気になるなら、一度そっちに注意を向けて、「痒み痒み」で戻ります。こんな風にね、何か気がそれたと気づいたら、呼吸に戻す。気づいたら戻すという練習を繰り返していくというのが、マインドフルネスの前半ですね。
どちらかというと、集中力を高める集中瞑想の要素がここでは大きくなっています。 ということは観察瞑想の要素を大きくしたパートがあるはずだ。これが最後の行ですね。 さらに注意をパノラマ的に広げて、六根(ろっこん)を通して気づくことができる様々な体験を同時にとらえ続けるようにする、というのが後半です。
六根(ろっこん)というのは聞いたはことないと思いますが、仏教の言葉で、五感プラスふっと浮かんでくる思考も含めた言葉です。
ふっと浮かんでくる思考というのは、我々が五感で何かを捉えたその次に何か考えるわけですよね。何か考えて、現実のある側面をつかむということが、我々の心の中で起こるんですね。
これは、自動思考と言われたりしますけどね、ふっと浮かんでくる思考です。 これは仏教の考え方では、知覚の一つなんです。五感と同じような役割をする、現実をとらえる知覚の一つとして自動思考がある。
このふっと浮かんでくる思考までは知覚なんですが、その後考え続ける、さっき言った鬱の人であれば、ふっと浮かんできたことに対して、ぐるぐる後悔を始めちゃうわけですね。
あるいは不安な人であれば、ぐるぐる取り越し苦労を—こういうのはマインドアンダーリムと言ったり、繰り返し思考と言ったりしますが—この繰り返し思考は今言った六根の中には入りません。
この繰り返し思考が生じてくると、我々はそれに飲み込まれていって、マインドレスになってしまうということになるわけです。 この後半のところは、だから注意をパノラマ的に広げて、自分が感じられる限りのものを同時に感じながら、呼吸を続けていくというような、そういう方法になるわけです。
足を意識して文章を読む
注意の分割が何の役に立つのか。簡単に体験できる練習があります。画面が小さいとなかなかうまくいかないかもしれませんが、ちょっとやってみましょうかね。
皆さん自分の足、座っていたら足の裏が床についてる感じ、あるいは胡坐でもかいてたら、すねが畳についてる感じ、そういうところにちょっと注意を向けてください。
足の裏を感じるってどんな感じなんだろう。ちょっと新鮮ですよね。足の裏ってこんな感じなんだ、ちょっとなんか汗っぽいなーとかね、ちょっと冷たいなとか、それを感じながらここに書いてある6行を読んでみてください。
どうですかね、たぶん画面が小さいので、6行といってもパッと、「あ、チューリップの花の歌だ」と読めちゃいますよね。それだとちょっとつまんないんですけど、もうちょっと画面が大きい所で見て、足の裏のことを感じながらこれを読もうとすると、なかなか読めないことが多いんですね。
いつものようにさーっと読めない、たどたどしい、なんかチューリップの花なのだなと思っても、普通だと聞こえてくるメロディー、聞こえてきますよね。これを見ると、あるいは風で揺れてるチューリップが見えたりします。
あるいは子供たちの遊んでいる声が聞こえたりします。でも、足の裏に注意していると、そういうのが全然出てこない。たどたどしく読んで、なんかなかなかそれ以上のものは出てこないということが多いですね。
これは何かというと、我々の心のキャパシティは意外と小さいということが知られているんですね。最初に足の裏に注意を向けると、そこで心のキャパシティが使われちゃうんですね。
残ったキャパシティでこれを読もうとすると、いろいろなことを考える余地がもうないんです。 いろいろなことを考える余地が残らない、だから考えが出てこない。イメージが出てこない。
で、何が起こるかというと、なんか白い背景の上に、黒い文字が並んでいるんだけど、「あ、チューリップかな」みたいなことがようやくわかる程度。そっちのほうが実は物理的な現実に近いですよね、これは白い背景の上に黒い文字が並んでいるだけで。
注意の分割というのは、現実のいろんなものに注意をあらかじめ向けてくるわけです。気を配っていく。気を配っているから現実はありありと感じられるんですね。
そこでも現実の心のキャパシティを使ってしまっているので、それ以上考える余地がないので考えが出てこない。
つまり考えに飲み込まれないわけです。だからますます現実がありありと感じられる。
「考えないでおこう」としていないので、心は閉じてないんです。 現実を感じ取るようにしてるわけですから。だから、この注意を分割するということを行えば、心を閉じない、飲み込まれないで、現実をきちんと感じることが可能になるんです。
この注意の分割では、注意が分割できて現実を限りなく感じるというのが目標なんですが、でも手段でもあるんだということです。ここをぜひ頭においていただくと、マインドフルネスとは何なのかということがわかってきます。
散歩やウォーキングする時は、自然の中を歩いていくわけですよね。そうするといろんなものが五感を通して入ってきます。それを感じながら歩いていくんですね。歩いていくと移動していきますので、現実がどんどん変わっていくんですね。
そうすると入ってくる刺激もどんどん変わっていくので、もう退屈なんかしている暇もないですね。どんどんどんどん感じながら、自分が自然の中を歩いていく、これは非常にマインドフルネスな状態という風に、言っていいんじゃないかと思います。
VOL.4に続く。
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