テストステロンと歯の健康
テストステロンを上げるためには、亜鉛やタンパク質などを食事から摂取することがとても重要です。そして、食事を生涯楽しむには歯の健康が不可欠です。今回は、歯の健康とテストステロンの関係を考えてみます。
歯は消化器の一部です。健康な歯で食べ物をしっかり噛み砕かないと、胃に負担がかかり消化不良の原因になります。また、咀嚼することで分泌される唾液も十分ではなくなります。
唾液には消化酵素に加え細菌を減少させる免疫物質も含まれています。細菌から身を守るためにも健康な歯でよく噛んで食事をすることは大切です。細菌による身体の不調はテストステロンを下げてしまいます。
よく噛まない“早食い”の人は、満腹中枢が働く前に過剰に食べてしまうため、肥満になりやすい傾向があります。肥満はテストステロンの低下を原因としてEDにつながるという研究結果があります。しかも、早食いは血糖値を急激に上げてしまうため、糖尿病のリスクも高まります。早食い防止はよく噛むことで、そのためにも健康な自分の歯を維持することが大切です。
人の永久歯は28本です。年齢別の歯の平均本数は40代で27.8本、60代で22.8本、80代で13.0本とされ、40代を過ぎると歯を失う本数は加速します。男性の場合、40代は徐々にテストステロンの低下が始まる時期でもありますので、テストステロン維持のためにも歯の健康維持は大事です。高齢者の歯の本数の減少は、認知症や転倒のリスクを高めるということも分かっています。
東京医科歯科大学が発表したマウスモデルによる研究結果では、成長期に咀嚼刺激が低下すると、海馬をはじめとした脳神経系の発達を妨げられることで記憶・学習機能が障害される可能性が明らかになりました。テストステロンは海馬でも作られているため、この点からも咀嚼とテストステロンに関係があるといえす。特に成長期の男子は、心身を発達させるうえでテストステロンの分泌が欠かせません。
テストステロンを維持するのに重要な歯を失わないためにも、日々しっかり歯を磨き、定期的に歯科健診を受けて口腔のメンテナンスをしましょう。
【一般社団法人1UP学会】 男性医療に関する最新医療技術や情報の啓発・広報活動を行う医療専門団体。テストステロン補充療法による専門外来を東京都千代田区の日比谷国際クリニック(http://www.hibiyakokusai.or.jp)で実施している。
【堀江メソッド】
近年、サプリメントの普及によって簡単に栄養を摂取できるようになりましたが、本来は栄養が豊富でおいしいものを自分の歯でよく噛んで、楽しい食事の時間を過ごすことがテストステロンを上げるためにも重要です。サプリメントに頼り切り、食事をおろそかにしないように心がけましょう。またサプリメントは信頼できるメーカーを選び、粗悪な製品の過剰摂取にはご注意ください。
この記事の監修者
堀江 重郎
1960年生まれ。東京大学医学部卒業。日米で医師免許を取得。国立がんセンター中央病院、杏林大学講師を経て帝京大学医学部主任教授に就任し、日本初の男性更年期外来を開設。2012年に順天堂大学医学部教授に就任。日本抗加齢医学会理事、日本Men's Health医学会 理事長を務める。『ホルモン力が人生を変える』他著書多数。テレビ番組の出演、監修も多数。
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