テストステロン量は顔つきに現れる!?論文から関係を紐解く
「顔がデカい人ほどテストステロンが高い」。そんな噂を聞いたことはありますか。
もしも顔つき(骨格)で一目でテストステロンの高さがわかるのであれば、鏡を見て自分のテストステロン量を確認したり、ほかの人と比べてどうなのか比較したりしてみたいもの。また、テストステロン量の高さをアピールし、より魅力的な男性として見られたい人もいるかもしれません。
テストステロン量と顔つきには、本当に関係があるのでしょうか。この記事では、論文をもとにテストステロンと顔つきの関係性についてご紹介します。
テストステロン量によって、顔つきが変化する?
はじめに結論を述べると、現在では「テストステロン量によって、幅や骨格といった顔つきは変わらない可能性がある」と示唆されています。
しかし2010年前後までは、テストステロンの量が顔つき(横幅)に現れるとされていました。関係性があるとする説を知る人のなかには「なぜ結論が変わったのか」「本当に関係ないのか」と思う人もいるでしょう。
また、第二次性徴におけるテストステロンの作用をご存じの人も多いと思います。
研究論文でも以下のような言及があり、「影響がある」とするほうが納得しやすいでしょう。
『男性では、テストステロンの作用により、下顎が肥大し、全体的に彫が深くなると共に、眉筋が隆起することに伴って、相対的に目が細くなる。また、鼻や頬骨も高くなる。このような特徴は「男らしい」印象を与える』
(参考文献:顔の魅力研究の現在-普遍性と個人差に対する進化心理学的アプローチ)
そこで、ここからはテストステロン量と顔つきの関係について検証された論文を3本、時系列にそって見ていきましょう。
かつては「テストステロンにより顔つきが変化する」とされていた
はじめに、1997年に発表された論文を見てみましょう。この研究論文では、男性119人・女性114人を対象に検証を行っています。
唾液から計測されたテストステロン値と顔写真から、顔つきとテストステロン量の関係性を検証しました。その結果、以下の通りです。
「専門家は、テストステロン量の多い男性は笑顔が小さく、頬骨筋と眼輪筋の筋肉活動が少ないことを発見しました」
「非専門家の人は、テストステロン値の高い男性のほうが、笑顔に労力を必要としていると判断しました」
「非専門家の人は、写真の男性が笑顔であるにも関わらず、テストステロン量の高い人の見た目へ低評価をつけました」
(参考文献:Testosterone, Smiling, and Facial Appearance | SpringerLink)
「テストステロンが高い人は笑顔が小さい」という文言は、現在解明されている「テストステロンはやる気を起こさせ、ポジティブな気持ちにさせる」といった役割と反するように思えますが、顔幅が大きければ相対的に笑顔が小さく見えるとも言えます。
この論文だけで「テストステロン量と顔の大きさは、マイナスな方面で関係している」とするのではなく、他の論文も参照する必要がありそうです。
テストステロンと顔つき(骨格)に関する2013年の論文
次に、2013年に発表された論文を確認していきましょう。
「顔の幅と高さの比率(fWHR)が大きいことが、攻撃性やステータス追求といった男性の一連の行動特性と関連づけられています。(中略)テストステロンの基準値や反応性テストステロンとfWHRの関係を調査しました」
「スピードデート後に採取されたサンプル1では、fWHRと反応性テストステロン値に関係性がみられました。テストステロンの基準値とも、わずかながら関連性がみられます。
サンプル2では、テストステロンの基準値とfWHRに関係があることがわかりました」
「fWHRはどちらのサンプルにおいてもテストステロンと関係があることが示唆されています。なかでも、顔幅がテストステロンと関連する可能性が示唆されました」」
(参考文献:Telling facial metrics: facial width is associated with testosterone levels in men - ScienceDirect)
つまり2013年に発表されたこの論文では、顔つき、とくに横幅がテストステロン量に関係している可能性があると結論付けています。「顔が大きいほどテストステロンが高い」という通説があるのも、もっともといえるでしょう。
テストステロンと顔つきに関する2018年の論文
ここまでで、「テストステロン量が多いほど笑顔が小さい」「テストステロン量と顔つき(fWHR)は関連している可能性がある」といった論文が確認できました。
最後に、2018年に発表された論文を見てみましょう。この論文では前提として以下の記載をしています。
「顔の幅と高さの比率(fWHR)またはグローバルな指標によって測定される男らしい顔つきは、有意性や攻撃性といったさまざまな行動特性に関連付けられています。さらに男らしい顔つきは、テストステロンレベルによって影響を受けると考えられています。
ただし、fWHRおよびテストステロンレベルに関する最近の分析では、関連性がないとする可能性が示されました。これについて今回、男性と女性で調査します」
顔つき(fWHR)とテストステロン量の関係について「関係性があるとは言えない」とする分析結果が出たことをうけ、男性・女性で改めて検証していくとする論文です。
そこで140人の男性(18~34歳)と151人の女性(18~35歳)を対象に、テストステロン値と顔つきに関係があるのかを調査しました。その結果は以下の通りです。
「唾液のテストステロン基準値、反応性テストステロン値あるいは毛髪のテストステロンレベルと、fWHR・男らしい顔つきとの関連は確認できませんでした」
「全体として私たちの結果は、fWHRも顔の男らしさもテストステロン量に関連していないという証拠を提供し、以前の発見に疑問を投げかけています」」
(参考文献:Further Evidence that Facial Width-to-Height Ratio and Global Facial Masculinity Are Not Positively Associated with Testosterone Levels | SpringerLink)
検証結果をうけて、通説となっていた顔つきとテストステロン量の関係性に疑問を投げかけることを明記しています。
よって、テストステロン量と骨格(顔つき)について、「以前は関係があるとされていたが、実は関係がない可能性がある」というのが最新の研究による結論です。
実際の顔つきは変わらないのになぜ「変化した」と感じるのか
上記のような研究結果がある一方で、「テストステロンを気にするようになって、雰囲気が変わったと言われる」「顔つきが変わったと言われることが増えた」といった体験談があるのはなぜでしょうか。
これはテストステロンが増えることにより、前向きな精神状態になるためではないかと考えられます。
例えば、テストステロン量が減少した際にみられる症状「LOH症候群」では、うつや認知機能の低下などが認められます。テストステロンが減少することで、不安感が出る場合があるのです。
そのためテストステロン分泌の少ない人は、不安感があり、表情が少なく、疲れた表情が増えることで「元気がなく魅力のない人」という印象を持たれる可能性があるのではないでしょうか。
一方で、ポジティブで挑戦的なメンタルを支えるテストステロンが増えれば「若々しい方向に顔つきが変わった」と言われる人が多いことも頷けます。また、テストステロン量を増やすために筋トレに取り組む人も増えています。筋トレやスポーツに取り組むことで、体つきはもちろん、顔周りもすっきりします。そのことで「顔つきが変わった」という印象を持たれる可能性もあります。
ホルモンの影響やトレーニングの成果により、総合的に「顔つきが変わった」という印象になることが考えられるのです。さらに顔つきと若々しさに関しては、花王と尚桐学院大学の共同研究の結果も参考になります。
結論を引用すると、以下の通りです。
「50代女性における若々しい顔印象の認知構造をモデル化した。その結果、若々しさは、推定年齢、イキイキ感、清潔感から成る複合印象であり、特にイキイキ感の寄与が大きいことが明らかとなった。また、目もとから口もとまでの領域の可変的特徴との関係性については、推定年齢にはシワたるみ感、イキイキ感には目力感、清潔感には透明感が特に関与していることがわかった」
(参考文献:複合印象としての若々しさと顔特長との関係性を表す認知モデル)
つまり、他者からみて「イキイキ感」が感じられるかどうか、といった点が若々しい印象に直結することがわかっているのです。よってテストステロン量が高く、積極的で元気のある人は「若々しい」「魅力的」と映るようになると考えられます。
結論として、テストステロンと顔つきの関係は「テストステロン量に応じた顔の幅になる」のではなく、「テストステロンにより前向きな精神状態になり、明るい顔つきになる」ことにあるといえるでしょう。
まとめ
テストステロンと顔つきの関係性に関する結論は、時代により変化してきました。1997年の論文では「関係性あり」とされていましたが、2018年の研究では「関係性に疑問あり」へと変化しています。
テストステロンは、やる気を起こさせ、前向きに物事へ取り組む精神性を支える効果のあるホルモンです。そのため、テストステロン量が増えることで前向きになり、イキイキとした表情をするようになったことで「顔つきが変わった」という印象を受けるようになると考えられます。
イキイキとした明るい表情になれば、対人コミュニケーションや仕事にもよい影響がでるはず。テストステロン量を高めて、理想の自分を目指しましょう。
- 参考文献
・クリニックTEN 渋谷 https://clinicten.jp/
・ScienceDirect https://www.sciencedirect.com/
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