【第一人者が監修】テストステロンとAGA(薄毛)の「本当の関係」は?

堀江メソッド筋トレ20220907/薄毛イメージ

「テストステロンが高いとAGA(男性型脱毛症)になりやすいのか?」という質問をいただくことがありますが、これは誤解です。正確には総テストステロン量の問題ではなく、テストステロンの一種である「DHT(ジヒドロテストステロン)」が“悪さ”をしているのです。

DHTは、テストステロンと頭部や前立腺などに存在する酵素「5αリダクターゼ」が結びつくことで生まれる、より活性の高いテストステロンです。従って、テストステロンを増やすことがAGAにつながるというのは、必ずしもイコールではありません。

DHTは胎児期には男性器の発達、思春期には体毛が生えたり声変わりを促すなどの役割があり、成長期の男性には必要なホルモンです。AGAの原因になるからといって一概に悪者にはできませんが、成人期にDHTが優位だとAGAの原因となってしまいます。

薄毛のメカニズムとしては、DHTが前頭部や頭頂部の毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体(レセプター)に結合し、脱毛因子(TGF-β)を増やし、毛母細胞の増殖が抑制されることにより髪の成長期が短縮し、薄毛につながっていきます。また、DHTが多いと皮脂の分泌を促進するので、頭皮環境が悪化することで脱毛につながることも考えられます。

私たち(1UP学会)が行っているテストステロン補充療法は、5αリダクターゼが活性しDHTが増えやすい状況で行うと、AGAの進行を早めてしまいます。一方、AGA治療で処方される薬は総テストステロン量を抑えるものが主流ですので、テストステロン補充療法とはトレードオフの関係となります。同時に治療を検討している際は、必ず医師に相談してください。

ちなみに、5αリダクターゼの活性には遺伝が大きく影響しているようです。確かに親子で薄毛という家族は多いですよね。また、生活習慣や食事も重要です。5αリダクターゼをを抑制するための食事としては亜鉛の多い牡蠣、しじみ、レバー、イソフラボンを含む納豆や枝豆などの大豆類が効果的です。ノコギリヤシも効果的ですが、食品から取ることは難しいので、サプリメントがおすすめです。

DHTの抑制についての研究は近年、盛んに行われています。紅茶と大豆食品を同時に食べるとDHTを減らす効果が期待できる、というハーバード大学の論文もあります。ただし、同論文によると、緑茶と同時に食べるとフリーテストステロンも下げてしまい、緑茶だけの摂取は逆にDHTを上げるそうですので、注意が必要です。

【一般社団法人1UP学会】  男性医療に関する最新医療技術や情報の啓発・広報活動を行う医療専門団体。テストステロン補充療法による専門外来を東京都千代田区の日比谷国際クリニック(http://www.hibiyakokusai.or.jp)で実施している。


【堀江メソッド】

薄毛にならないためには、総テストステロン量を上げる生活習慣を維持しつつ、AGAの発症前に5αリダクターゼの活性を抑えることでDHTの発生を抑制するのが効果的といえます。

DHTは汗や尿で排出されやすいので、水分をしっかり取って運動で汗をかくのはAGA対策に効果的です。気持ちよく運動をすることでストレスを解消し5αリダクターゼの活性を抑えることも期待できます。


参照:[Soy Phytochemicals and Tea Bioactive Components Synergistically Inhibit Androgen-Sensitive Human Prostate Tumors in Mice](https://academic.oup.com/jn/article/133/2/516/4687887#SEC2)

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この記事の監修者

堀江 重郎

堀江 重郎

1960年生まれ。東京大学医学部卒業。日米で医師免許を取得。国立がんセンター中央病院、杏林大学講師を経て帝京大学医学部主任教授に就任し、日本初の男性更年期外来を開設。2012年に順天堂大学医学部教授に就任。日本抗加齢医学会理事、日本Men's Health医学会 理事長を務める。『ホルモン力が人生を変える』他著書多数。テレビ番組の出演、監修も多数。


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