テストステロン増やすために睡眠と日光浴は大事
「テストステロンを増やして、男らしい体づくりをしたい」「活動的で、魅力溢れる自分でいたい」。そんな時に意識して整えたいのが、睡眠習慣です。
あなたは普段、忙しさのあまり睡眠時間を削ったり、お酒を飲んでそのまま眠ったりしていませんか? そうした習慣は、テストステロンの分泌を妨げてしまいます。
では何に気を付けるべきかを、テストステロンと睡眠、日光浴の関係を踏まえて解説します。加えてテストステロンを増やすために、すぐにできる4つのことも紹介。今日から実践して、理想の自分を目指しましょう。
睡眠の質と時間帯が、テストステロン分泌を左右する
なぜテストステロンの分泌に睡眠が関わるのか、疑問に思う人もいるでしょう。
睡眠とテストステロンの関係について、研究論文や研究者のインタビューをもとに解説します。
睡眠の質が低下すると、テストステロンが激減する
テストステロンの分泌量は、睡眠の質や時間によって左右されます。具体的に何時間くらいの睡眠をとるのが良いかというと、8~9時間が理想的です。
忙しいと「普段の睡眠時間なんて、5~6時間程度で十分」と考えてしまいがちですが、実はそれでは不十分なのです。睡眠時間が不足するとどんな影響が出るのかを、2つの研究論文から解説します。
まずは睡眠障害や不眠症を抱える女性762人を対象にした、ホルモン分泌と睡眠障害についての研究論文です。
この研究では、プロゲステロンとテストステロン、および遊離テストステロンが、睡眠障害や不眠症により悪影響を受けることが解明されました。
(参考文献:フタル酸曝露と内因性ホルモンと自己申告の睡眠中断との会合:中生生の女性の健康研究からの結果)
眠りが浅かったり睡眠時間が確保できない人は、同じようにテストステロン分泌が少ない状態にあると考えられます。
次に2011年に男性を対象として行われた、睡眠不足とテストステロン分泌に関する論文を見てみましょう。この研究では対象者の睡眠時間を8時間55分から4時間48分に減らし、テストステロンの分泌量を計測しました。
その結果、睡眠不足により昼間のテストステロン量が10%から15%も減少することが判明したのです。
(参考文献:Effect of 1 week of sleep restriction on testosterone levels in young healthy men.)
しっかり時間をとって眠ることが、テストステロンの分泌を促進させる有効な手段と言えそうです。スマホに使う時間を少しだけ我慢して、十分に睡眠時間をとるよう心がけましょう。
睡眠は夜間にしっかり取る
睡眠時間を確保しようと多忙な現代人が考えてしまいがちなのが、通勤時間や昼休みを活用した仮眠ではないでしょうか。
普段電車に乗っているだけの時間を睡眠に充てられるなら、毎日トータルで8時間眠れるという人も多いと思います。しかし、それでは効果的とは言えません。それというのも、テストステロンを多く分泌するにはその時間帯も重要だからです。
テストステロンの分泌に最適なのは、夜中に眠ること。2つの論文から解説します。
はじめに紹介するのは、順天堂大学准教授、松下一仁氏の語る「テストステロン補充療法のエビデンス」。ここで松下氏は「男性ホルモンは夜中につくられますから、睡眠が障害されると、どうしても男性ホルモンは低くなりますので、睡眠の質を上げる必要があります」と語っています。
(参考文献:https://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/useful/doctorsalon/upload_docs/200264-2-50.pdf)
テストステロンは、夜中に分泌が行われるホルモンです。そのため通勤時間や昼休みを活用して眠るより、きちんと夜に眠る方が効果が期待できます。
しかし、夜中といっても12時から深夜2時あたりなのか、さらに3時から4時あたりなのか、人によって感覚は違いますよね。
そこで大まかな時間帯とテストステロンの関係について言及した論文を確認すると「睡眠不足はテストステロンを低下させるが、それは睡眠制限が夜中の前半に起きた場合に限られる」と結論づけられています。
(参考文献:The relationship between sleep disorders and testosterone)
明け方に近い3~4時よりも、早めの0~2時あたりにしっかり眠る方が効率的にテストステロンの分泌を促せると考えられるのです。
これらのことから、テストステロンを意識するなら「夜間にどれだけ質の良いしっかりとした睡眠がとれるか」がポイントだということがわかります。
レム睡眠・ノンレム睡眠とテストステロン分泌
夜中前半の睡眠が重要であり、睡眠を分散させてはいけないことにはきちんとした理由があります。それは、テストステロンの分泌を促す役割を持つLH(性腺刺激ホルモン)を産生・分泌しなければならないためです。
LHは、レム睡眠・ノンレム睡眠のサイクルと連動して分泌が行われます。睡眠が始まると、まずは成長ホルモンの分泌が行われるノンレム睡眠に入り、LHが分泌されます。
そして次に起こるレム睡眠で、ようやくテストステロンが分泌されるのです。ノンレム睡眠・レム睡眠のサイクルを遮らないことこそ、テストステロン分泌に重要と考えられます。
このことにより、分散させた睡眠では十分なテストステロン分泌が期待できないと言えるのです。
また2008年に発表された論文「睡眠関連ホルモンの計測」には、以下の記述があります。
「思春期の男性では、夜間の性腺刺激ホルモンの増大と一致して、精巣より分泌されるテストステロン血中濃度が高値をとる(中略)若年成人男性では、LHの日内変動ははっきりしないが、睡眠中のLH分泌はREM-NREM周期と一致して起こる。
テストステロンは夜中前に最低値を取り、早朝に最高値となる日内変動を示す。夜間のテストステロン増加は、最初のREMエピソード出現と関連している。」
(参考文献:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/46/2/46_2_169/_pdf)
この論文では、テストステロンの分泌には最初のレム睡眠が重要であることが明記されています。
それぞれの論文を合わせて鑑みると、初めのレム睡眠でテストステロンが多く分泌されるので夜間、特に前半の睡眠の質が重要ということがわかるのです。
きちんとテストステロン分泌が行われるよう、夜にしっかり眠るようにしましょう。
夜に眠気を起こすには「日光浴」が重要
夜に眠り、日中に活動するためには「概日リズム」の形成が重要です。
概日リズムとは、24時間周期を基本単位にして生活するうえで重要な体内時計のこと。このリズムを作るには、日光浴が重要な役割を担っています。
例えば、人工的に昼・夜を再現し内分泌系の測定を行った実験では以下の結論が出されています。
「人間の概日ペースメーカーは、生物学的日と生物学的夜のための内因性プログラムを生成します。これらのプログラムは、太陽時の季節変化に合わせて期間を調整できるため、柔軟性を示します」
(参考文献:Endocrine and other biological rhythms in man)
つまり、概日リズムは昼に活動し夜に眠るためのリズムを作る、そして概日リズムは日光の変化に合わせて柔軟に変化する、ということが分かっています。
しっかり夜眠れて睡眠不足になりにくい体づくりをするためには、日光を浴びて概日リズムを季節に応じて整えることが重要です。
今日からできる改善策
睡眠不足を避けるため、今日からできることはたくさんあります。その中で特に意識しておきたい、4つのポイントについて紹介します。
以下のことをチェックして、睡眠前の行動を少しだけ見直してみましょう。
眠る前のスマホ操作・パソコン操作を控える
眠る前はつい、ネットサーフィンやゲームのためにスマートフォンやパソコンを使ってしまいがちですよね。しかし液晶から発せられるブルーライトには、覚醒効果があることをご存じでしょうか。
せっかく日中にきちんと日光浴をして、眠る準備も万全にしたのに、スマホでブルーライトを浴びて目を覚ましてしまっては非常にもったいないです。
しっかり眠るためには、就寝の1~2時間前からスマートフォンなどの操作を控えるのがおすすめ。就寝前はゆっくりと読書をするなど、液晶から離れて過ごしましょう。
入浴は湯船に浸かってゆっくりと
スムーズに入眠するためには、自律神経にも注目する必要があります。交感神経よりも副交感神経を優位にする必要があるのです。
交感神経は活動したり緊張したりすると優位になる神経のことを言い、副交感神経はリラックスしたり眠ったりするときに優位になる神経を言います。
就寝はリラックス状態での行動なので、副交感神経を優位にすることが重要です。
副交感神経が優位な状態へもっていくために、効果的かつ毎日できることがあります。それが入浴です。熱いお湯に浸かるとかえって交感神経を優位にさせてしまうので、40℃程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かるようにしましょう。
就寝時の照明はほの暗い程度まで下げる
あなたは眠るとき、部屋の明るさはどれくらいまで下げているでしょうか。「明るく電気をつけたままで眠ってしまう」という人は要注意です。
照明が明るすぎると、当然入眠しにくくなります。照明の光にもブルーライトが含まれていること、青色光によって覚醒効果の影響を受けてしまうことなども、眠りを妨げてしまう一因です。
照明はほの暗い程度まで下げ、入眠しやすい環境を作るようにしましょう。
お酒を控える
「お酒を飲むと体がぽかぽかしてよく眠れる」と、寝酒をしている人もいるでしょう。しかし実は、寝酒は逆効果です。
それというのも、お酒には覚醒効果があるため。一時は血流を良くし体を温め入眠しやすくしてくれますが、後から覚醒効果が作用してきて、全体的に眠りが浅くなります。
「寝酒をした翌日は、なんだか体がだるい……」なんて経験をしたことはありませんか?しっかりとした睡眠をとるためには、お酒は控えるのがおすすめです。
他にも寝酒と関係なく、アルコールは睾丸における男性ホルモン(テストステロン)の産生を抑えてしまう恐れもあります。【テストステロンとお酒(アルコール)の関係は?】に”テストステロンとお酒の関係性”と”影響しない酒量”についても詳しくまとめていますので、合わせてご覧ください。
まとめ
テストステロンの分泌は、睡眠の状態に大きく影響されます。睡眠に問題を抱えていたり、少ない睡眠時間で済ませていたりすると、その分泌量は10~15%も減ってしまうのです。
テストステロンを増やすよう食生活などに気を使っていても、睡眠で損してはもったいないですよね。しっかりと8時間以上の睡眠を取り、テストステロンが多くなるよう整えていきましょう。
- 参考文献
・Sleep-associated augmentation and synchronization of luteinizing hormone pulses in adult men https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1944808/
・くぼたクリニック松戸五香 https://www.kubota-clinic.info/
・All About https://allabout.co.jp/gm/gc/451340/
・住宅照明中のブルーライトが体内時計と睡眠覚醒に与える影響 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jusokenronbun/42/0/42_1408/_pdf/-char/ja
・レム睡眠のメカニズムと生理的意義 https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2017.890911/data/index.pdf
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